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11年09月15日

スタッフコラム『米国の大学図書館の事例に見る日本の寄付文化醸成のヒント』

カテゴリー:信頼資本日記

まだまだ残暑が厳しい最中ですがみなさまにはお変わりなくお過ごしでしょうか。

今年2011年は東日本大震災を大きな転換点として,615日にはNPO法の改正,622日には寄付税制関連法案が成立,日本の寄付文化醸成にとって大きな布石が打たれた転換期であると言えるでしょう。

日本ファンドレイジング協会が2010年末にまとめた「寄付白書2010」では日本の個人の年間寄付総額(2009年)は5,455億円だそうです。また6割の人が寄付の促進を期待しながらも実際に寄付したのは15歳以上の3人に1人に留まったと言われます。ところが今年,震災義援金は5ヶ月だけで3,000千億円を突破しており,また震災以降の岩手,宮城,福島3県への「ふるさと納税」も2009年度の100倍近い33,000万円を超えているのです。

こうした新しい流れが今後継続するためには何が必要なのか,寄付文化が日本より成熟する米国の事例を大学図書館という側面からアプローチした論文を最近目にしたので,今日はその内容の1部から今後のわが国での1つの寄付文化醸成のヒントとできればと思っています。

米国はご存じのようにキリスト教精神に基づく寄付文化の熟成,それによって集まる大規模な基金,税制面での優遇措置などが,寄付を支えていると語られます。しかし,そのような諸条件が整うまでには米国も様々な試練を乗り越えてきました。また米国の大学図書館という側面では,その運営において寄付は不可欠な存在になっていると言います。

現在の米国の寄付文化を支え,また現在の大学図書館の運営を支える要素には様々なものがありますが,その中で私が非常に興味深いと思った点は以下の3点です。

1つは寄付金獲得に関して非常に高いスキルが必要であるという認識がされている点です。図書館長や大学長にとって資金調達能力は最重要なものの1つと見做されており,その勤務時間の30-50%が外部資金獲得に費やされています。また資金獲得の専門性を高める場も用意されています。例えばインディアナ大学フィランソロピーセンターには資金調達大学院が設立され2004年から博士レベルの大学教育を実施,年間200名もの者が入学してそのスキルを磨いていると言います。

2つ目はボランティアあるいは寄付者として市民が大学図書館に貢献できる場が提供されている点です。米国の大学や図書館には寄付者データベースが蓄積されています。その中から大学の図書館に関心を寄せている寄付者にアプローチすることで効果的な寄付や活動を得ることへとつながっています。また20世紀初頭から公共・大学図書館に友の会(Friends)が設けられ,会員は財政支援・資料寄贈・ボランティア活動などによって図書館を支えています。会員は図書館の利用権の獲得やニューズレターを受け取ることなどの恩恵を得ると同時に,「図書館に協力をしている」という誇りを持つことが可能となります。

3つ目は寄付が戦略的かつ長期的視野によって集められている点です。多様な寄付の要素がある中で,「大学の図書館に寄付をする」という選択を寄付者に選択してもらうための体制があるということです。例えば大学図書館には各自の専門に関する(通常修士以上)学位と図書館情報学の修士(または博士)を持った図書館司書が教育研究支援に関わり,専門職(または準専門職)として認識されています。こうした体制が整えられることによって資料検索・論文執筆支援など大学院レベル以上の研究者に有効な対応が行われるのです。専門性の高い図書館司書に支えられた卒業生たちはその恩恵を認識しているため,図書館への積極的な寄付へと結びついてゆくのです。

これら3つの要素はこれからのわが国の寄付文化醸成に非常に参考となる点であると思います。それには長い年月の育みが必要ですが,寄付元年とも言われる今年,長期的視野に立った寄付文化醸成の青写真を描くことは,非常に重要なのではないでしょうか。

(上原)

※本コラムは、隔週で配信しております、信頼資本財団のメールマガジン「信頼資本財団メールマガジン」に掲載されたものです。

 

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