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『世界のルールが変わる!』シンポジウム(2010年12月18日開催)レポート⑤
■パネルディスカッション
パネラー
住 明正 氏(東京大学サステイナビリティ学連携研究機構地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクター・教授
山岸 俊男 氏(北海道大学大学院文学研究科教授)
鎌田 恭幸 氏(鎌倉投信株式会社代表取締役社長)
渡邉 幸義 氏(株式会社アイエスエフネット代表取締役社長)
モデレーター
熊野 英介 (公益財団法人信頼資本財団 理事長)
熊野:環境問題や食料、エネルギーの枯渇という外的制約条件が近い将来厳しさを増すことが明白な今、残された食料、エネルギーを管理するために、世界は監視社会化を強め、全体主義に陥る可能性がある。
そのような事態を回避するためには、従来の「利己× 外発的動機付け(お金や地位等)」ではなく、「利他× 内発的動機付け(人の喜ぶ顔が見たい、社会への貢献等)」という新しい動機付けで動く、個人、社会、そして企業のあり方が求められると思う。
果たして上記のような動機付けで動く個人、社会、企業のあり方とはどのようなものだと思われるか、パネラーの皆様のお考えをお聞かせください。
住:食料、エネルギーの枯渇が良く取り上げられるが、グローバルで見たときには、当分の間は大丈夫だろうと考えている。
ただし、現在も大量の食料が廃棄されているので、むしろガバナンスの方が重要だと考える。物量的には枯渇することはないだろう。
100%ということはないので、既存の原理原則にあてはめて、危機感をあおるのではなく、その場その場の判断で状況に応じて対応していくことが必要だと思う。
山岸:完全な解決を求めると、無理をせざるをえない。信用の話も同様で、完全な信用を求めようとすると無理が発生する。そのためのコストはものすごく大きくなる。それによって失う自由も大きい。
どうしたらよいかに正解はないが、ある程度のところで手を打つことが必要か。監視していくことが必要か、監視することで失うものを重視するかは国民が全体で考えることが必要。
鎌田:大きなことを国家に期待するというよりは、一人一人が自分にできることを考えていくと、世の中が変わるのではないかと思っている。
例えばお金の使い道を考える。お金の使い方でいえば、自分ではできないが、良い会社に投資することや、消費者になることもその手段。会社に投資することは個人では金額的に難しいが、多くの人が集まることで可能になる。
企業と株主が今までは、利益を奪い合う関係であったが、これからは共存する関係を築けると思う。誰に支えられているのかを意識すること、そこに信頼が生まれる。信頼が大事だと思います。
渡邉:雇用の面からお話しますと、8時間勤務という一般的な決まりが、多くの方の雇用機会を奪っている。例えば、在宅で1時間、2時間の仕事をしていただくようにするためには、そういった仕事を通常業務から切り出すことが必要。
そしてそのためには社員の協力が不可欠だ。それを行うためには、普段から会社のトップが社員と共感、共鳴しておくことが必要だ。それがないと協力は得られない。
熊野:住先生、山岸先生からは、タイトな関係性は逆にいろいろな問題をはらんでくる可能性があることを示唆いただきました。現在でも様々な無駄があるので、その時々で、ハンドリングできる柔軟性が必要ではないか。柔軟性のある世間(150人くらいの顔の見える関係性)の上に契約社会をのせればよいのでは?というご提案がありました。
また、鎌田社長からは、権利を保障する国家や組織に期待するのではなくて、一人一人の精神の自由の心がけを動かすことで社会的価値の配分は可能であるというメッセージをいただきました。
また、渡邉社長からは、仕事の時間に関する思い込みを変えるためには、集団の中の共感性を高めることで可能性が見えてくるというメッセージをいただきました。
熊野:小さなあきらめが大停滞を生んでいる。小さな可能性を行動に移す動機があれば、大きな希望にすることが出来ると思う。この小さな可能性を構想へ移す動機についてメッセージをください。
住:70%の20世紀と30%の21世紀という考え方がある。70%の20世紀にかけるのであれば、これまでどおりやっていけばよい。これは発展途上国への進出等である。
一方30%の21世紀については、知識社会になるので、おそらく、定型がない。高度経済成長期はあるパターンを行うことに慣れすぎていたが、この部分を問いただしていく必要がある。現在の問題は、かつての日本にはあった、多様な生き方の道が狭まっていることにある。
現在はお金や容姿、能力があるところ(人)に集中する傾向がある。つまり、親の経済力の格差が子供への投資の格差につながり、初期状況の差が明確になってきている。日本にはチャリティーの精神がないので、そういった格差の是正をパブリックが担っていく必要がある。
あとは、これからはアイデアの勝負の時代。実は日本はその分野が得意だ。ただし、それを商売にし、グローバルに展開することが得意ではない。これまでの重工業偏重ではなく、ファッションなどの業界では、大変いいものを作っているので、そういった部分を伸ばすとよいと思う。
年寄りが若者の可能性をつぶしている。ジェネレーションギャップがある。
山岸:協力行動の研究を20年以上行ってきた。そこで分かったことは、完全な利他主義者は1割、完全な利己主義者も1割。残りの8割は、協力行動は必要なことは理解しているが、他の人がどうするのかを見てから決める人達。
その人たちにとって重要なのは、他の人も協力してくれるという確信が持てるか。良い循環を起こすのは「お話=ストーリー」だと思う。
今の日本にあるストーリーは、みんな自分の利益だけを考えて、ますます世の中が悪くなっていくんだ、というのが一般的なストーリーである。そのストーリーがある限り、多くの人がそれに影響を受けてしまう。しかし、これは現実ではない。
したがって、新しいストーリーを作る必要がある。今回発表のあった事業による取り組み(鎌倉投信やISFネット)が新しいストーリーとして世の中に広がれば、世の中は変わっていくと思う。
鎌田:ダーウィンの進化論に「生き残る種というのは、最も強いものでもなければ、最も知的なものでもない。最も変化に適応できる種が生き残るのだ」という言葉があるが、これは企業にも当てはまると思う。
今のように大きく時代が変わる転換点において、日本も長い不況、構造変化の中でこれらに対応していかなければならない。
今までの日本を引っ張ってきたのは大きな企業や組織。シュンペーターは「肥大化した組織からはイノベーションは生まれない」と言っている。大きな組織には制約条件も出てくる。4半期ごとの決算など。これら管理社会は大きな問題である。
周りの元気のある企業や自治体を見ると、共通しているのは、トライ&エラーを行っていること。そういった企業、組織には、失敗を許す風土がある。成功の反対は失敗ではなく、何も挑戦しないこと。
「みんな自分のやれる範囲の中で、バッターボックスに立とうよ!」と言いたい。みんなが参加者になるといいと思う。
渡邉:就労困難者の支援や公演をしていると、いろいろな団体から相談を受ける。最近は、難民支援の団体やDV(ドメスティック・バイオレンス)被害者支援の団体のお話を聞いた。非常に厳しい状況だ。
「小さな可能性を大きな希望へ」と言った時に、入り口でダメだと判断してしまうと、その後何も生まれない。私が出来ることは「1」だけかもしれないが、それを人に伝えていくことで、いろいろなところで希望が生まれてくる。その時重要なのは、人は自分の生活に余裕のない中では、他人のことを考えることは難しい。衣食住が足りないと、心に余裕が生まれない。
したがって、社員にはいつも「余裕を持て」と言います。人が困っている時に手を貸してあげる喜びを感じるために、今の仕事を頑張るんだ、ということを言っている。企業の成果はつきつめていくと、結果主義でもプロセス管理でもなく、今回のテーマである「利他的で内発的な行動」がどれだけ現れるか、だと思う。
当社の事例でいうと、今まで清掃の契約をしていたが、社員から、就労困難者の支援をするのであれば、外部委託している清掃を自分達社員がやります、という申し出があった。
17支店全部の清掃を社員が行うようになったことで2000万円コストが減った。人は誰しも他人にやさしさを示したい。そして、そのやさしさを示せるようにするためにも、トップと社員とのコミュニケーションによる共感・共鳴が必要だと思う。
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